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高津戸優子

25歳・美大生・埼玉県出身・2010年からドイツ在住

http://www.yuko-takatsudo.com

 

日本人なら誰もが知っている東京藝術大学油画科に通っていた高津戸優子さん。卒業後、ヨーロッパの美術を知るため国立ミュンヘン芸術アカデミーに入学。抽象アートが基本の絵画クラスに所属。日本ではセールスポイントになる「東京藝術大学卒業生」という看板を捨て、「高津戸優子」としてのアーティスト人生を歩んでいる。


追記:Handmade Lifeのロゴとヘッダーは高津戸さんのデザイン。

―ドイツに留学したいと思ったきっかけを教えてください。

大学2年生の時に東京のギャラリーでグループ展をさせてもらいました。その隣のギャラリーにミュンヘンからいらしたドイツ人の作家さんがいて、その方と知り合ったのがきっかけです。作品を見てもらい「君の作品は良いから、もっと外に出た方がいい。日本だと女性の作家が成功するのは難しいし、海外進出は良い経験になるよ。」と言われました。

海外に出る日本人は元々目的があり、自分で調べて行くケースが多いと思いますが、私の場合はそれまで海外旅行さえしたことがないくらい外国に興味がありませんでした。しかし大学の4年間だけでは自分の作品がまだまだ完成されていなく、もっと深く学びたいと思い、その方の助けを借りてドイツへ行くことを決めました。日本で奨学金の援助を受けられたことも金銭面の支えになっています。

 

―ドイツの中でもミュンヘンを選んだ理由は?

その作家さんがミュンヘンに住んでいて、美術大学があったことですね。でもさすがに下見をせず、いきなり留学するのは不安だったのでその年の夏にミュンヘンを見に行きました。一か月間滞在し、ミュンヘンには特に違和感がなく馴染めた。穏やかな街なので居心地が良かったです。ミュンヘンの美大も見学しました。設備がとても充実していて、大学に見えないくらい綺麗な建物で。大学に通うとなると長期滞在になるのでミュンヘンなら覚悟を決めて行けるかな、と思いましたね。

 

―それで住んでみてもう3年目になりますね。ミュンヘンで好きな場所はありますか?

もちろん美術館にはよく行きますよ。特にアルテ・ピナコテーク*が好き。こっちに来るまではヨーロッパ美術の巨匠の作品を生で見る機会はなかなかありませんでした。例えば日本でゴッホ展に行ったとしても本物のゴッホの絵は1枚しか見られません。今までは画集の中だけの世界だったので実感が持てませんでしたが、巨匠たちの生の絵を見て、はじめて本当の意味で感動できました。

 

―ドイツに住んでみて自分の中で変化はありましたか?

まずはドイツ語を覚えたこと。ドイツ留学を計画してから藝術大学を卒業するまでの約2年間、ドイツ語のプライベートレッスンを受けていました。だけど実際に来てみたら、ドイツ語がまったくしゃべれない(笑)知り合う人達には最初から「英語はできません。ドイツ語しか分かりません。」と言い、ジェスチャー全開のドイツ語でコミュニケーションを取っていました。それでも、日本で習得したドイツ語の発音の仕方等はとても為になりました。

あとはドイツ人や他の外国人は曖昧なことを言わないので、はいかいいえをはっきり言うようになったと思います。日本の「空気を読む」という価値観はここにはなく、やりたいならやりたい、嫌なら嫌とはっきり言わないと相手は察知してくれません。自身の作品についても曖昧な発言をすると必ず突っ込まれるので自分の意見を言いきらないといけない。最初は語学の問題もありそれがすごく難しかったのですが、徐々に慣れていきました。確かに言葉にしないと理解してもらえないことはありますよね。

 

―クラスの同級生と作品の批評もしますか?

はい。ミュンヘン芸術アカデミーではクラスごとに教授、アシスタントと学生を交えてディスカッションが行われます。頻度はクラスによって違いますが、私のクラスでは月2回。参加者全員で作品についてとことん討論し合います。それが日本の大学との違いですね。藝術大学にいた時は仲の良い友人と批評し合うことはあっても、本音で話し合えるまでには時間がかかりました。けれどドイツではまだ会って5秒の人でも作品の率直な感想や質問を言ってくるのでドキっとしますね。

 

―それで辛口な批評を受けたことも?

それは、もう(笑)あまり批判をしない日本に慣れていたので、ドイツで非難され落ち込んだこともあります。でも自分がやっていることにちゃんと自信を持っていれば持ち直せますよ!

 

―ところで外国人としてミュンヘン芸術アカデミーに入学するためにはどんな試験があるのですか?

美術大学によって試験内容は異なりますが、ミュンヘンの良い点はドイツ語の試験がないことです(笑)すぐに学生になってアトリエで制作したかったので語学試験がなくて助かりました。ミュンヘン芸術アカデミーでは入りたいクラスの教授との面談で自分の作品を見せ、その場で承認を得る事が出来ればほぼ合格できます。マッペ*という作品集を作り教授にプレゼンテーションをしますが、絵画クラス志望ならポートフォリオではなく実物の作品を見せることが一番大事です。私の場合は4月に面談を受け教授に認めてもらい、そのマッペを5月に提出、7月頃に本人確認の実技試験がありました。実技試験では画材や支持体、枚数は自由で各自用意します。2~3時間かけ制作、作品を提出しました。私が受けた年にはテーマが無く。いつものように水彩作品を制作し数枚提出しました。そして無事正式に合格したので10月から大学がスタートしました。

 

―教授との面談ですか。これもクラスのディスカッションのようにドキドキしますね(笑)

面談は一人10分と決められています。作品を見せて気に入ってもらえたらいいけれど、1分で終わるケースもあります。3枚目の絵で「ちょっと私のクラスには合わないな~他のクラスに行ってみたら?」とスパっと切られてしまうことも(苦笑)各クラス新入生を毎年2人~10人取るので、波がありますね。私のクラスには現在総勢15人いますが、他クラスには20人いることもあります。

 

―ドイツ留学といえば学費が安いことが利点ですよね。ミュンヘン芸術アカデミーの学費はいくらですか?

今のところ1ゼメスター(学期)342ユーロですが、予定では2013年冬学期から無料になり事務費(約60ユーロ)だけ負担することになります。安いので留学生が多いですよ。スペイン、イタリアなどの南ヨーロッパ圏、アジアなら日本人もいるけれど韓国人が目立ちますね。大体700人いる生徒の中でドイツ人は約6割を占めています。

 

―大学内で友達をつくるのは簡単ですか?

クラスの教室がアトリエになっているので、そこで作業しているとクラスの子たちとは簡単に仲良くなれます。あと、お酒を飲めると便利です!(笑)びっくりしたのは日本だとアトリエでたばこを吸う人やお酒を飲む人はなかなかいないのですが、ここでは午後の制作中に突然飲み会が始まることも(笑)自由なスタイルがヨーロッパらしいですよね。

 

―高津戸さんのこれからの展望を教えてください。

私は人間が多様な性質と繋がっていることを描画する方法として多彩な色を利用し、テーマに合う素材を見つけ出し、組み合わせ、絵にしています。そして水と言うマテリアルを使用し、流動的で有機的な人の身体のなめらかさやそこに宿る感情を表したいと思い、水彩やアクリル作品を中心に描いてきました

最近は、紙に一度描かれたドローイングをもとに、空間に立体として再現するという試みもしています。絵画の材質感を表す時に「絵肌」と言いますが、言葉の通りキャンバスは絵にとって「肌」です。そのキャンバスを私は絵画のためだけでなく、有機的な物体を作るためにも使用しています。空間を作り上げる気持ちでやっているのでインスタレーションともいえるかもしれませんね。


あとは制作の拠点をミュンヘンからベルリンに移すことも考えています。ベルリンはニューヨークとロンドンに並んで今のアートの中心地なので、せっかく同じ国に住んでいるのに行ってみないのはもったいないかな、と。ドイツ国内でも多くのアーティストが成功を夢見てベルリンに進出していますが、それを冷たい目で見る人もいます。でもそれぞれがベルリンで経験することは違いますし、自分も実際に行ってみなければ何も言えません。とりあえずベルリンでアトリエを借りて、アートの荒波に揉まれながら貧乏アーティストの一人として暮らしてみたいです(笑)

 

―最後にこれからドイツに行くことを考えている人に一言お願いします!

私はドイツに住んでみて居心地の良さを実感しています。もちろん異国の地で苦労することは多いのですが、本当に良い人達に巡り会い、困った時にいつも優しい言葉をかけて助けて貰えたことが私の暮らしを充実させていると思います。あとドイツの長所といえば物価が他の先進国に比べて安いこと、ビールが美味しいこと、意外に日本人がいることです。画材もとても安くてびっくりしました!想像していたより住みやすいです。

 

 

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*アルテ・ピナコテーク=Alte Pinakothek。中世からバロック期までの絵画が陳列しているミュンヘンの国立美術館。ホルバインなどのドイツ絵画の他にフランス、スペイン、イタリアの優品も展示されている。

*マッペ=Mappe。ファイルの意味だが、美大生の間では作品集のことを指す。

 

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