第6回

 

八島崇博

35歳・美容師・札幌市出身・2007年からドイツ在住

 

ワーキングホリデービザを利用してドイツへ来る日本人美容師は多い。八島崇博さんもその内の一人だったが、今年でドイツ生活11年目を迎える。2017年には初めて日本人ではなくドイツ人経営の美容院に転職。ドイツでの美容師人生とライフワークバランスについて語ってもらった。

 

ー八島さんが渡独したきっかけとは?

ドイツに住む前は6年間東京の美容院に勤めていて、ちょうど転職を考えていた時期でした。伝手でデュッセルドルフにある美容院のオーナーにお話をもらい、2か月後には旅立ちました。そのお店は開店したばかりで自分にとっても良い修行になるかと思って。2年後ミュンヘン支店を開く話が持ち上がり、店長になるお誘いを受けたのでミュンヘンに引っ越しました。

 

ードイツ語はどのように習得したのですか?

正直、日系企業にいた頃はお客さんも日本人が多いので、忙しさを理由にあまり勉強していませんでした。語学学校に通い、独学でも学ぶようになったのは5年前からです。今でも勉強し続けています。

 

ー現在の勤め先はドイツでは4番目の美容院であり、初のドイツ人経営サロンとのことですが、どのように見つけたのですか?

普通に応募して面接と一日の体験入店を経験した後に契約を交わしました。実は今まではいつもコネクションで仕事を見つけていたので、履歴書を書いたことがありませんでした。初めて履歴書と志望動機書を書いたのがドイツ語という・・・(笑)。あとは前職の労働証明書*も応募書類に加えました。面接ではビザと年金の書類を見せたのが好印象がだったようです。

 

(*労働証明書(Arbeitszeugnis)とは退社する際や異動がある場合に人事部・上司に書いてもらう成績のような書類。仕事内容とその評価が数字ではなく、文書にまとめられている。転職活動に役立たせるために所有しているドイツ人は多い。)

 

ー都市も職場も転々とすると、新しい環境に馴染むためにどんな「技」が必要になりますか?

全てを受け入れること。そうすれば、「ドイツ人だから」という考え方を捨てられるし、日本に戻った時に「ドイツ人も日本人も大して変わらないんだな」と思えます。例えばお店に入った時に日本ではみんな「いらっしゃいませ」と清々しい声を出してくれるけど、その声がロボットみたいに聞こえてしまうこともありますよね。それならいっその事ドイツ人が出す気分次第の声を聞くのも悪くないです(笑)

 

ー日本の美容院とドイツの美容院はどう違いますか?

日本では労働時間がルーズで、だらだらやってしまうことをドイツではきゅっと短縮してこなしています。ここでは開店5分前までに出社すれば良いし、仕事を8時間で終わらせることができる。日本だと毎日閉店後に終礼と反省会があるけれど、ここは不定期でミーティングをするだけ。だからこそ一人一人のスタッフが自分の個性を100%出せるのかなと思います。掃除に関しても、日本ではスタッフが綺麗にするけれど、ドイツでは清掃員を雇い、スタッフは閉店後さっさと帰る。要は美容師は美容師の仕事をするだけなのです。

他にドイツ人らしいことと言えば、仕事後にスタッフとの付き合いがないこと。年齢が少しずれている(3-4歳年上か年下)せいもあるかもしれませんが、定期的な飲み会はなく、年に一回ミュンヘンにある全4店舗の合同クリスマスディナーがあるだけです。

 

ードイツ人のお客さんから学べることはありますか?

ドイツ人を担当することは自分のカラーリングのレベルアップに繋がっています。日本人は地毛が黒かこげ茶で、カラーをする時に好む色は(年代によって少し違うけれど)茶色一色がほとんどです。ドイツ人は地毛が明るいから、染める色のトーンが全く違います。ブロンドのお客さんに関して言えば、黄色っぽさを足すのか、アッシュを混ぜるのか、どんなメッシュが良いのか、など色々考えます。ドイツ人は自分の好みの色にこだわりがあり、その色を出すことが求められます。

 

ー八島さんがミュンヘンに残っている理由を簡単に教えてください。

住んでいて違和感がないのが一つ。帰国することを考えたら、ここにいた方が満足度が高いと思います。独身だから自分のやりたいことができますし、日本にいるよりかは幸せに感じます。例えば、ミュンヘンの街を散歩するだけでも緑の多さと綺麗なイザール川を眺めて、良い気分に浸れます。このような気持ちの良さは東京で散歩しても感じませんでした。

そして日本よりワークライフバランスを保てるのもメリットです。仕事に追われてばかりいないためか、電車や配達物の遅れなど日本にいるといらっとすることがドイツでは受け入れられてしまう。良い意味で辛抱強くなったと言えますね。

仕事に関して言えば、今持っている目標はミュンヘンで自分のお店を持つことなのです。年が明けたらマイスター*の資格を取るために学校にも通う予定です。

 

(*ドイツ独自の最高職人国家資格。筆記と実技試験から構成されており、独立を目指す職人達などが取る。)

 

ーワークライフバランスのライフの方はいかがでしょうか?何か趣味でもあるのでしょうか?

最近レトロなイタリア製自転車にはまっていて、同年代の日本人男性と共にミュンヘン周辺の湖などで走っています。この前は3泊4日でフランクフルトからヴュルツブルクまで(=約120km)走行しました。田舎のホステルや個人経営のホテルに泊まり、夜は飲み会をし、まるで学生の合宿みたいでした!

 

ー最後に11年間ドイツに住んでいて未だに慣れないことや変に感じることはありますか?

慣れないことはありませんが、変に感じることはたまに深い眠りからぱっと覚めた時に「ここ、どこだろう。あ、日本じゃない」と一瞬混乱してしまうことがあります。日本や小さい頃のことを夢に見た後は海外にいることを忘れてしまうようです(笑)